大手コンサルファームの次に、南坊をアサインした理由

株式会社All Right取締役　大平晃史氏（取材当時）

南坊 泰司

ご依頼をいただいた当時を振り返っていきたいのですが、新規事業のプロジェクトチームが立ち上がったのが始まりでしたよね。新規事業は、どのような経緯でスタートしたのでしょうか？

大平 晃史

主な目的は、新しい顧客接点の基盤をつくることでした。生命保険会社の課題として、生命保険の加入者が高年齢化していること、保険以外での接点を生み出しにくいことがあります。

そこで、デジタルを活用した非対面かつ、非保険サービスという２つの要素で新規事業を展開することになりました。2020年7月1日、T&D保険グループの持株会社であるT&Dホールディングスにて、デジタル顧客基盤プロジェクトチームが発足したのです。

南坊 泰司

その状況から、なぜ私に依頼をすることになったのでしょうか？

大平 晃史

当初、大手コンサルティングファームの支援を受け健康アプリを軸とした戦略を進めていましたが、企画フェーズから実行フェーズに移行するにあたり、専門性の高い人材をシェアリングしている会社とご縁があり、南坊さんを紹介していただきました。

株式会社manage4代表取締役／マーケティング・ディレクター　南坊泰司

南坊 泰司

大手コンサルティングファームの次に個人である私をアサインするのは、悩まれたうえでの決断だったと思います。どのようなことを期待されていたのでしょうか？

大平 晃史

正直にお話しすると未知数と言いますか、もちろん期待はしつつも何をお願いすべきか、どんな相談ができるのか、そのくらいの状況でした。また、社内でも大手コンサルから個人への変更に対する不安の声がありました。

でも、南坊さんはプロジェクトの状況のキャッチアップが迅速で、専門知識を話す前にまず私たちに寄り添い、耳を傾けてくれたことが嬉しかったですね。

南坊 泰司

私は前職の経験から、エンタープライズ企業が新規事業をスタートすることの難しさを痛感していましたので、「何をすべきか」という合理的な話からではなく、経緯はもちろんのこと、大げさに言うとプロジェクトへの思いの部分から支援することを意識していました。

大平 晃史

南坊さんは我慢強いと思います（笑）。私たちがこれまで経験していない、非対面、非保険サービスということもあり、リテラシーが追いついていない部分も多かったのですが、同じことを何度聞いても理解できるまで答えていただきましたよね。

南坊 泰司

御社とのミーティングで素晴らしいと感じたのは、わからないことを何度も、すごく細かいところまで掘り下げて質問されるところでした。しっかり腑に落ちるまで聞いていただいたおかげで、ミスコミュニケーションなく進められたと思っています。

大平 晃史

私たちのリテラシーを上げてくれたことが、南坊さんをアサインした一番大きなメリットだと思います。南坊さんとミーティングを重ねることで、気づきが生まれて質問が増えていく。それが雪だるま式になって、だんだんと南坊さんから「素晴らしいと思います」と言われることに安心して、次の段階へと進むことができました。

南坊さんからいただいた意見に対して「それとは別のやり方ももしかしたらあるかも？」と考えることも増え、そのときは自分たちの成長を感じました。

南坊 泰司

恐縮です（笑）。みなさんが慣れていない分野でしたから、初めのうちは相談の意味で質問されることが多かったのだと思いますが、ありがたく受け止め、支援させていただきました。

All Right社の立ち上げとブランディングを支援したアプローチ

南坊 泰司

当初予定していたアプリをどう使うと効果的か、メリットとデメリットについてもたくさん議論を重ねたことを覚えています。

大平 晃史

サウンディングを重ねた結果、提供するサービスの軸を健康アプリからLINEの公式アカウントに変更することになって、それからまた運営方針や具体的なサービス内容についても一緒に考えてもらいましたね。

南坊 泰司

健康応援サービスの「ピアコネ」ですね。改めてリリースおめでとうございます！

健康応援サービス「ピアコネ」

大平 晃史

プロジェクトが始まってから、少しずつパートナー企業を増やしていきましたが、それでもやっぱり慎重になっていたんですよね。ようやく事業開始が決まって、新会社を設立するまでに至ったのは南坊さんの後押しのおかげと言っても過言ではないです。

南坊 泰司

ありがとうございます。リサーチのためにいろんなLINE公式アカウントに入られていましたよね。

大平 晃史

プロジェクトメンバー全員で、日本全国のさまざまなLINE公式アカウントを登録しました。200、いや300くらいあったと思います。南坊さんからLINE公式アカウントを活用した成功事例を紹介してもらいながら、配信頻度や使い勝手を細かく分析していきました。

リサーチをもとにパートナー企業に提案して、良い反応がもらえたら嬉しくてすぐに南坊さんにメールしたこともありましたね（笑）。

南坊 泰司

私も嬉しかったです（笑）。高いレベルの分析を行いながら、同時にパートナー企業への提案は本当に大変だったと思います。

大平 晃史

保険の営業とは異なり、パートナー企業への提案は別の難しさがありました。

南坊 泰司

確かに、「商品を購入してください」とは違いますよね。みなさんがこれまで培われてきた保険の営業手法とは違うと言いますか。

大平 晃史

特に、スタートアップ企業への提案資料を作る際は、切り口に苦労しましたし、南坊さんに添削の協力もいただきましたよね。下からでも上からでもない絶妙なスタンスでアプローチを考え、なおかつスタートアップ企業に“刺さる”表現にしなくてはいけなかった。

南坊 泰司

提案のフックを作るために、ヒアリングやインタビューを何度もしましたよね。健康領域の中で何をイシューにするべきかなど、弊社でカスタマーインタビューの企画、実施もさせて頂きました。

大平 晃史

健康領域と言っても広いですから、なるべく多くのお話を聞きながら、どのポイントに注目し、ブラッシュアップするかを検討する日々でした。何よりもまだ会社もサービスもできていないし、ユーザーもいない、ファクトがゼロの状態でしたから。

南坊 泰司

みなさんがスタートアップと言いますか。

大平 晃史

まさにそうですよね。All Rightという社名もですが、T&Dグループでありながら保険会社らしくない。

南坊 泰司

社名の方向性やブランディングの部分にも関わらせていただきましたが、グループ内でもすごくポップな印象を与えられているかと思います。

大平 晃史

ありがたいことに、グループ内での異動の公募にも多くの希望者がいました。保険会社はアナログな業務の割合が多いので、デジタル分野に興味を持ってくれた人がたくさんいたみたいです。

南坊 泰司

そういったチャレンジングな方が多いのは、グループとしてすごく素敵なことですね。

大平 晃史

All Rightで非対面、非保険サービスなど新しいことを経験して、それを中核会社に持ち帰って活躍することも大いにあると思っています。

南坊 泰司

もちろん将来的には収益の柱となることも視野に入っておられると思いますが、All Rightはグループ内でデジタル人材の育成という役割も担っているということですね。

課題を見失っているエンタープライズ企業へ伝えたいこと

南坊 泰司

これまでを振り返り、ご依頼いただいた感想をお聞きしてもよいでしょうか？

大平 晃史

先ほども申し上げましたが、会社が立ち上がり新規事業をスタートできたのは南坊さんのおかげだと思っていますし、とても感謝しています。特に印象的だったのは、コミュニケーションの素晴らしさで、これまで経験した仕事の中で一番気持ちがいいです。

南坊さんの質問に対する回答が絶妙で、「答え」というよりも「教え」に近いイメージです。人は全部の答えを言われると満足してしまって、それによって成長が止まってしまうことがあります。

もちろん、確証を求めたときはしっかりと答えてくれました。でも、誰しもプライドのようなものが少なからずあって、これまでの経験や、得た知識、確信を持っていることに対して「違う」と言われたら嫌な気持ちになりますよね。

南坊さんは、そこを見極める感性がとても高いです。例えるならば、映画『スター・ウォーズ』のジェダイマスターがパダワン（弟子）に教えを説くように、すべては教えない。ポイントだけを教えて、解釈を見守るような人だと思います。

南坊 泰司

ありがたいお言葉をいただけて嬉しいです。「こうすべき」と決めつけないことをいつも意識しています。最後に、御社のような課題を抱えているエンタープライズ企業に対して、何かお伝えするとしたらどんなことでしょうか？

大平 晃史

問題を感じているけれど、課題が見つからない、課題がわからなくなっている場合は、仮説にとらわれて根本が違うことに気がつけなくなっているかもしれません。病気などの診断でも、セカンドオピニオンが大事と言いますよね。南坊さんのような専門家に意見を求めることで真の課題が見つかり、解決につながることがあると思います。

南坊 泰司

「ピアコネ」をはじめ、All Rightの今後の展開をとても楽しみにしています。