トライブマーケティングで最大300%成長を実現。新たな顧客層の開拓に成功した独自戦略

Speakers
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    竹内恒太

    株式会社WinTicket取締役/マーケティング責任者

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    北尾昌大

    クリエイティブディレクター

Interviewers
  • 南坊泰司

    株式会社manage4代表取締役/マーケティング・ディレクター

株式会社WinTicketが運営する競輪・オートレースインターネット投票サービス「WINTICKET(ウィンチケット)」。競輪のインターネット投票のシェアを拡大した結果、新規登録者数が頭打ちとなる中、マーケティングの抜本的な改革が必要となっていました。 本案件では、代表の南坊泰司と、manage4とタッグを組むクリエイティブディレクターの北尾昌大が、戦略立案からクリエイティブ制作まで包括的にサポート。「トライブマーケティング」という手法を確立し、売上が最大約300%成長という驚異的な成果を実現しました。

競輪ユーザー獲得が頭打ち。新たな市場の開拓が急務だった

株式会社WinTicket取締役/マーケティング責任者 竹内恒太氏

株式会社WinTicket取締役/マーケティング責任者 竹内恒太氏

南坊泰司
南坊泰司

あらためて、本プロジェクトを弊社へご依頼いただくまでの経緯をお伺いします。

竹内恒太
竹内恒太

最大の理由は、ウィンチケットのマーケティングが一時停滞していたことです。ありがたいことに、競輪のインターネット市場のシェアが拡大した結果、新規登録者数が完全に頭打ちになっていました。

南坊さんに依頼をする以前から、クリエイティブ制作を中心に別の代理店からのサポートを受けていましたが、この状況をブレイクするためには、クリエイティブだけではなくマーケティング全体を包括的にサポートしてもらえるパートナーが必要だと判断しました。そのタイミングで、知人から南坊さんを紹介されて。ご経歴はもちろん、オリエンテーションで感じた知識の深さを信頼し、依頼を即決しました。

株式会社manage4代表取締役/マーケティング・ディレクター 南坊泰司

株式会社manage4代表取締役/マーケティング・ディレクター 南坊泰司

南坊泰司
南坊泰司

ご依頼いただいたのは、ちょうど新キャンペーンの実施のタイミングでしたね。打ち合わせをした結果、状況を変えるため、一度ゼロベースで戦略を練ることになりました。そこでの話し合いで印象的だったことはありますか?

竹内恒太
竹内恒太

池の話ですね。南坊さんから「ウィンチケットがずっと釣りをしていたのは、競輪は経験したことがないが競輪に興味を持っている人が集まっている池でしたが、その池にはもう見込みの顧客がいなくなってしまいました。であれば近くにある別の池にアプローチし、新しい人たち(競輪に全く興味がない人)に集まってもらう。そして、その人たちに競輪に興味を持ってもらえるように育て上げてみましょう」という提案をもらいました。

実際、クリエイティブも競輪に少なからず興味がある方に向けたものになっていましたし、当時実施していた登録キャンペーンの利用条件も、競輪に初めて触れる人にとってはハードルが高くなっていました。その状況の中で、池にいる「競輪に興味がある方」を獲り尽くしてしまっていたので、伸び悩むのも当然のことでした。

*2025年4月に中断

この「池」という表現が、社内での共通言語になったんです。おかげで経営陣への説明でも「もう今の池には魚がいない」と伝えることで、なぜ新しいアプローチが必要なのかを直感的に理解してもらえました。

南坊泰司
南坊泰司

まさにその共通認識を作ることが目的でした。大きな戦略転換を進めるには、経営層から現場まで全員が同じ危機感と方向性を共有する必要がありましたから。「池」という分かりやすい表現が、その役割を果たしてくれたと思います。

竹内恒太
竹内恒太

そのおかげで、プロジェクトの方針がはっきりと見えました。

具体的には、トライブマーケティングにより、周辺の池にアプローチすること。その上で、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティをキーワードに掲げ、敷居を下げることで、興味を持ってもらった人から気軽に選んでもらえる状態にすること。この2点が、プロジェクトの方針として決定しました。

リッチなクリエイティブを量産できる体制が必要だった

クリエイティブディレクター 北尾昌大氏

クリエイティブディレクター 北尾昌大氏

北尾昌大
北尾昌大

当時のイメージキャラクターだったオダギリジョーさんと窪塚洋介さんとの契約が終了し、キャスト変更のタイミングで私がプロジェクトに参加することになりました。ご依頼いただいた経緯をお伺いします。

竹内恒太
竹内恒太

新しい戦略を実行に移すには、これまでとは違うクリエイティブ体制が必要でした。というのも、トライブマーケティングでは、ターゲットごとに複数のクリエイティブを作り分ける必要があります。ちょうどその頃、業界でもクリエイティブを素早く制作し、PDCAをどんどん回していく手法がトレンドになってきていたんですが、その当時の体制ではその対応がどうしても難しいと感じていたんです。

そこで、南坊さんに「質の高いクリエイティブを素早く作れて、テレビでもWebでも対応できるクリエイターはいませんか」とお願いしたところ、北尾さんをご紹介いただきました。念のため、別のクリエイターをコンペで募集する案も並行して進めていたんですが、北尾さんとお会いして、すぐにそちらは止めました。

北尾昌大
北尾昌大

ありがとうございます(笑)。「当時の体制では対応が難しい」と判断した理由も教えていただけますか?

株式会社WinTicket取締役/マーケティング責任者 竹内恒太氏

株式会社WinTicket取締役/マーケティング責任者 竹内恒太氏

竹内恒太
竹内恒太

当時は代理店に依頼をする形をとっていたのですが、代理店では営業の方がフロントに立つ体制なので、クリエイターと直接やりとりすることは基本的にできません。ウィンチケットの場合は、できるだけ膝を突き合わせて議論を進めていきたいというスタンスだったので、ミーティングに参加されるのが営業の方だけだと、要望が伝わるまでにタイムラグが発生してしまったり、細かなニュアンスがズレてしまったりということもありました。

南坊さんと北尾さんは、常におふたりともミーティングに参加してくれました。戦略面は南坊さん、クリエイティブ面は北尾さんと、それぞれの専門分野で直接やりとりできたので、スムーズかつズレのないコミュニケーションができました。

北尾昌大
北尾昌大

普段からトップと直接やりとりをして一緒に作り上げていくタイプなので、私としてもやりやすかったです。

竹内恒太
竹内恒太

あと、既存の体制とおふたりの違いでもう1つ大きかったのは、制作プロセスです。それまでの作り方だと、基本的にクリエイティブは100%の状態で納品されます。もちろんクオリティは高いんですが、今回のプロジェクトでは新しい試みが多く、細かく調整をしながら、20%、40%、60%と段階的に仕上げていく方が適していました。

決めることが多かったプロジェクトの前半は、週2回のミーティングの時間を作ってくれたので、微調整をしながら進めることができました。それだけではなく、「24時間メッセージしてください」「不確定なことでも何かあったら連絡してください」と常々言ってもらって。「今のところ、事業はこのように動いています」とか、「このキャストで進められそうですか?」みたいなラフなボールを遠慮なく投げることができました(笑)。意思決定や戦略検討に関して、早めの壁打ちができてとてもありがたかったです。

南坊泰司
南坊泰司

私たちとしても、状況をこまめにシェアしてもらえるのはとても助かるんです。「今、事業がこういう状況」「今は調子が良いけど、来月こういう問題が起きるかも」という話を、隠さず共有してくれたので、それが良いアウトプットに繋がったんだと思います。

周辺領域から新規ユーザーを開拓する、トライブマーケティング

左から南坊、北尾氏

左から南坊、北尾氏

北尾昌大
北尾昌大

私が参加した時点では、トライブマーケティングという方針は決まっていましたが、具体的な施策は未定でした。そこでまずWebCMで様々なメッセージを検証することを提案し、千鳥さん出演のWebCMを制作することになりました。

竹内恒太
竹内恒太

とにかくスピード感に驚きましたね。千鳥さんが忙しくされていた時期で、撮影時間の確保が難しくて。にも関わらず、限られた撮影時間内に7本分の撮影が完了していました。

もちろん千鳥さんが一流だったから、というのも要因の1つでしたが、北尾さんの進行に一切無駄がありませんでした。普通の制作会社さんなら絶対に断るような無茶なスケジュールだったはずなんですが、システマチックに完璧な対応をしてくださった。最終的にこのプロジェクト全体では、年間40本以上のクリエイティブを制作いただきました。

もちろんクオリティも担保された上での話です。「早かろう悪かろう」になることなく、質とスピードの両立を実現してもらいました。おかげでチーム内にも「質の高いクリエイティブ[1] を早く回す」というカルチャーが広がり、今でも根付いています。

インタビューでは「リッチなもの」と表現されていました。一旦汎用的な表現に変えています。

北尾昌大
北尾昌大

質とスピードの両立は、必須の条件でしたからね。というのも、今回のプロジェクトでの戦略はトライブ型。その他の遊戯や麻雀、ゲーム、格闘ユーザーといったように、競輪と関連性のある領域の一つひとつにアプローチする必要がありました。

竹内恒太
竹内恒太

トライブごとに刺さる動画を作り分けるとなると、その都度調整が必要になり、時間もコストも相当かかります。ですが「前回作ったあの麻雀の動画の構成で、次はゲームのパターンもお願いできますか?」というざっくりした希望でも、意図をすべて理解してくれて。最終的には、制作現場に僕が立ち会う必要がなくなるほどでした。

あとトライブに刺さるクリエイティブというところで、もうひとつの北尾さんの凄さを感じました。今は業界的に、クリエイティブ制作においてもAIの活用が広がっています。サイバーエージェントとしても同様でしたが、AIがどれだけ頑張っても北尾さんの生み出すクリエイティブには太刀打ちできないんです。

というのも北尾さんのクリエイティブは、人間の心をくすぐるんですよ。その特性と今回のトライブ型の戦略との相性が、抜群だったんです。

北尾昌大
北尾昌大

ゲーム好きや麻雀好きの人だけがクスっとなるようなちょっとした仕掛けだとか、そこが多分AIには分からないところだと思います。まさに狙っているところだったので、気がついてもらえて嬉しいです。

竹内恒太
竹内恒太

北尾さんの影響で「マーケティングよりもクリエイティブをやりたい」という気づきを得たチームメンバーもいるほどですから。

新規ユーザーのほとんどが競輪未経験者。数字が示すトライブ型の可能性

株式会社manage4代表取締役/マーケティング・ディレクター 南坊泰司

株式会社manage4代表取締役/マーケティング・ディレクター 南坊泰司

南坊泰司
南坊泰司

本プロジェクトにおける弊社のサポートについて、ここまでを振り返ってのご感想をお伺いします。

竹内恒太
竹内恒太

数値が格段に良くなったのは間違いないです。停滞から一気に最大300%まで登録数が伸びて、その後も高い水準で継続的に生み出せる構造ができました。トライブ型の戦略がピッタリとハマりましたね。

というのも、新規ユーザーのほとんどが競輪に興味がなく、競輪をやったことがない人だったんです。とあるユーザーは「競輪には興味がなかったが、ゲームと麻雀ユーザー向けのCMを見て興味を持ち、Xでの投稿も見てから登録を決めました」と複数接点でトライブマーケティングに接触されたような話していました。競輪好き以外への入口を用意できたことで、新しいユーザー層を開拓できました。

南坊泰司
南坊泰司

ミーティングでマーケティングの成果を聞く度に、とにかく伸びていたので、我々としても嬉しかったです。

竹内恒太
竹内恒太

このトライブマーケティングの手法は業界でも高く評価され、Brand Summitで講演する機会をいただくまでになりました。

ただそれ以上に、会社としても個人としても、今回のプロジェクトは大きな意味を持ちました。事業部側にマーケティング担当がいる中で、全てを代理店に頼んでしまうと、事業部が育たないんです。今回のプロジェクトでは、南坊さんや北尾さんに壁打ち相手になっていただき、理想を追求する姿勢を保ち続けられました。これは社内メンバーの育成・成長という観点でも大きな意味がありました。

もう一つは個人的なところですが、CMOはある意味孤独になってしまうんです(笑)。経営陣に相談する機会もなかなかないですし、部下とは経験の差もあるので、私に意見をすることを躊躇ってしまうメンバーもいます。

南坊泰司
南坊泰司

確かに経験が少ないメンバーからすると、「竹内さんが正しい」という先入観を持ってしまうかもしれません。

株式会社WinTicket取締役/マーケティング責任者 竹内恒太氏

株式会社WinTicket取締役/マーケティング責任者 竹内恒太氏

竹内恒太
竹内恒太

そういう時に北尾さんや南坊さんがいてくれたおかげで、自分の考えを率直に伝えることができ、的確なフィードバックもいただけました。部下でも上司でも、代理店でもない。まさに唯一無二のポジションでした。

南坊泰司
南坊泰司

これほど急成長中のサービスに携わる機会は、そう頻繁にあるものではありません。今回のプロジェクトで、ウィンチケットの成長に伴走させていただいたことは、非常にエキサイティングな経験になりました。

それでは最後に、今後の展望についてお伺いできますか?

竹内恒太
竹内恒太

1つ決まっているのは、今進めているトライブマーケティングをさらに進化させることです。新規ユーザーのほとんどが競輪未経験者だったという実績は、元々競輪に興味があった人がやったことがなかった人の「池」以外にもまだまだユーザーがいることの証明です。

さらに、広告規制が厳しくなっている中で、トライブ型の強みがより明確になってきました。ターゲットごとに伝え方の強度や表現をコントロールできるので、規制に配慮しながらも、それぞれのトライブが興味を持つメッセージを的確に届けられる。今後はさらに新しいトライブへの展開も含め、この手法の可能性をさらに追求していきたいと思っています。

北尾昌大
北尾昌大

2年間のプロジェクトを通じて、トライブマーケティングという新しい形を確立できました。今後も必要としていただける限り、全力でサポートいたします。

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